千葉県は2026年8月13日からの千葉豪雨と、9月19日からの台風25号で、1か月余りの間に2度大きな被害を受けました。この2つは、同じ「大雨の災害」でありながら中身がかなり違います。県の被害情報をそのまま並べると、住家の半壊は8月が3,015棟、9月が4棟。亡くなった方の状況も、8月は水、9月は土砂とはっきり分かれました。片付けや備えの優先順位を考えるうえで、この違いは知っておく価値があります。
数字を並べるとこうなる
8月千葉豪雨は第26報(9月17日16時発表)、台風25号は人的被害が第7報(9月23日8時発表)、住家被害が第5報(9月22日17時30分発表)の数字です。台風25号はまだ調査中の段階で、今後増える可能性があります。
| 項目 | 8月千葉豪雨 | 台風25号 |
|---|---|---|
| 死者 | 13人 | 6人 |
| 行方不明 | 0人 | 2人 |
| 重傷 | 2人 | 0人 |
| 軽傷 | 44人 | 21人 |
| 住家全壊 | 17棟 | 19棟 |
| 住家半壊 | 3,015棟 | 4棟 |
| 一部破損 | 251棟 | 25棟 |
| 床上浸水 | 985棟 | 341棟 |
| 床下浸水 | 3,352棟 | 86棟 |
| 災害救助法の適用 | 24市町(千葉市は直接実施) | 24市町村(8月の24市町は継続適用) |
目を引くのは半壊の3,015棟と4棟です。全壊はほぼ同じ(17棟と19棟)なのに、半壊だけが750倍以上違います。浸水の棟数も、床下で39倍の開きがあります。
半壊3,015棟と4棟を分けたのは、水につかった家の数
住家の被害認定では、床上浸水の深さや損傷の程度に応じて全壊・半壊・一部損壊が決まります。浸水が広い範囲に及べば、家そのものは流されなくても半壊と判定される住宅が大量に出ます。8月千葉豪雨の半壊3,015棟の内訳は、千葉市1,197棟、八千代市504棟、市原市332棟、佐倉市249棟、大網白里市238棟、柏市136棟と、いずれも市街地です。床下浸水3,352棟も千葉市811棟、松戸市414棟、八千代市309棟と続きます。
台風25号の浸水は、床上341棟のうち300棟が佐倉市に集中しました。高崎川が氾濫し、JR佐倉駅前から佐倉城址公園前までが水に浸かったためです。裏返せば、佐倉市以外では広い範囲の浸水がほとんど起きていません。台風25号の半壊が4棟(長南町2棟、館山市1棟、佐倉市1棟)にとどまったのは、浸水した住宅の絶対数が少なかったからです。
一方で全壊は台風25号のほうが多く19棟。このうち11棟が鴨川市(小湊、西町)です。土砂崩れで家屋が倒壊すると、浸水と違って一気に全壊になります。8月豪雨の全壊17棟も千葉市9棟、市原市4棟などで、こちらは土砂崩れと河川の氾濫が混ざっています。
亡くなり方が正反対だった
県が公表している人的被害の概要を読むと、2つの災害の性格の違いが最もはっきり出ます。
| 8月千葉豪雨(13人) | 台風25号(6人) | |
|---|---|---|
| 土砂崩れによる家屋倒壊 | — | 4人(鴨川市小湊2人、山武市森1人、茂原市本納1人) |
| 土砂崩れ(作業中) | — | 1人(袖ケ浦市川原井、道路の復旧作業中に重機ごと巻き込まれ河川へ転落) |
| 冠水した道路・水没した車内 | 7人(市川市、佐倉市臼井台、八千代市、千葉市3人、柏市) | 1人(印西市船尾、水没した車両付近で発見) |
| 路上で倒れているところを発見 | 1人(佐倉市上志津) | — |
| 用水路・河川・田んぼで発見 | 3人(いすみ市万木、千葉市若葉区中野町・多部田町) | — |
| 行方不明のあと発見 | 1人(市原市東国吉) | — |
| 一酸化炭素中毒 | 1人(千葉市中央区浜野町、停電のため室内で発動発電機を使用) | — |
8月千葉豪雨では、13人のうち10人が冠水した道路や水没した車、用水路や河川といった水に関わる状況で見つかっています。佐倉市臼井台の66歳女性と柏市八幡町の70代女性は、いずれも冠水した道路で自動車に閉じ込められています。千葉市中央区村田町の40代男性は水没した普通乗用車の車内で見つかりました。残る3人のうち1人は、停電中に室内で発動発電機を使ったことによる一酸化炭素中毒です。
台風25号では6人のうち5人が土砂崩れによるものです。鴨川市小湊では家屋が土砂に巻き込まれて80代の男女2人が亡くなり、さらに70代男性と60代男性の2人が行方不明のままです。袖ケ浦市川原井では、道路の災害復旧作業中の男性が重機ごと崩れた土砂に巻き込まれ、5メートル下の河川に転落しました。災害が起きたあとの作業中に、次の崩落に巻き込まれた形です。
この違いは、そのまま行動の優先順位に置き換わります。8月型の災害では「冠水した道路に車で入らない」「停電中に室内で発電機を回さない」が生死を分けます。9月型では「斜面のそばから離れる」「雨がやんでも崩れると考える」が要点です。
雨の降り方も違った
県の資料に載っている両方の降水量を、同じ10地点で並べます。8月は24時間最大降水量(8月13日)、9月は48時間降水量の期間最大値(9月19日〜22日)で、指標そのものが違う点には注意してください。
| 地点 | 8月13日の24時間最大 | 8月13日の1時間最大 | 9月19〜22日の48時間最大 |
|---|---|---|---|
| 千葉市 | 351.0mm | 115.0mm | 419.0mm |
| 茂原市 | 240.0mm | 57.0mm | 465.0mm |
| 佐倉市 | 239.0mm | 97.0mm | 377.5mm |
| 市原市(牛久) | 223.5mm | 49.0mm | 487.0mm |
| 館山市 | 208.5mm | 94.5mm | 433.0mm |
| 大多喜町 | 205.5mm | 56.5mm | 489.0mm |
| 船橋市 | 192.0mm | 62.0mm | 394.0mm |
| 我孫子市 | 186.0mm | 61.0mm | 328.0mm |
| 君津市(坂畑) | 143.0mm | 46.0mm | 477.0mm |
| 鋸南町 | 114.0mm | 41.0mm | 417.0mm |
8月13日は千葉市で1時間に115.0mm、佐倉市で97.0mm、館山市で94.5mmという猛烈な雨が降りました。1時間に100mm前後の雨は、下水道や側溝の処理能力をはるかに超えます。都市部の道路が短時間で川のようになり、車が動けなくなったのはこのためです。千葉市の24時間351.0mmも、大半がごく短い時間に集中したことになります。
台風25号は逆で、1地点あたりの時間雨量はそこまで極端ではない代わりに、48時間にわたって降り続けました。君津市坂畑は8月の143.0mmに対して9月は477.0mm、鋸南町は114.0mmに対して417.0mmで、房総南部では3倍を超えています。長時間の雨は地中深くまで水をしみ込ませ、斜面を崩れやすくします。県管理道路の法面崩落による全面通行止めが47区間に達したのも、この降り方によるものです。
被害の中心地域も入れ替わった
| 被害が集中した市町 | |
|---|---|
| 8月千葉豪雨 | 千葉市、八千代市、市原市、佐倉市、大網白里市、柏市、松戸市、四街道市、鎌ケ谷市、我孫子市(北西部と千葉市周辺の市街地) |
| 台風25号 | 鴨川市、茂原市、袖ケ浦市、山武市、君津市、市原市、木更津市、佐倉市、印西市(房総半島の南部・内陸と、佐倉市) |
災害救助法の適用市町村を見ても違いが出ます。8月千葉豪雨で適用されたのは千葉市・市川市・船橋市・松戸市・柏市といった人口の多い都市部を含む24市町。台風25号で新たに適用されたのは銚子市・木更津市・勝浦市・鴨川市・君津市・富津市・南房総市・いすみ市・大多喜町・御宿町・鋸南町など、房総南部と東部を中心とする24市町村です。8月の24市町は台風25号でも継続して適用されているため、県内の市町村の大半が現在も災害救助法の対象になっています。
両方で名前が挙がった市もあります。佐倉市、茂原市、市原市、大網白里市、山武市、館山市、長南町などは、8月に浸水や土砂崩れの被害を受けたあと、9月にもう一度被災しました。佐倉市は8月に半壊249棟・床上浸水40棟を数え、9月には床上浸水300棟。同じ市で性格の違う水害が続いた形です。
8月の復旧が終わる前に次が来た
交通への影響も重なっています。8月千葉豪雨では内房線の千倉〜安房鴨川が被災し、復旧に2週間程度かかるとして9月9日から代行バスが運行されていました。9月17日時点でもこの区間は「当面の間運転見合わせ」のままです。小湊鐵道も月崎〜上総中野の運休と代行輸送が10月上旬まで続く計画でした。
そこへ台風25号が来て、内房線は姉ケ崎〜安房鴨川、外房線は千葉〜安房鴨川が止まりました。小湊鐵道は上総牛久〜上総中野が当分の間運休となり、公式サイトには「8月の豪雨被害の影響による列車運行計画は、白紙となります」と書かれています。8月の被害から立て直している途中で、もう一段の被害が上に乗った状態です。
県が千葉市と八千代市について、大雨に関する警報の発表基準(流域雨量指数基準)を通常より引き下げた暫定基準で運用しているのも、8月千葉豪雨で河川の堤防が損傷したままだからです。この2市では、普段なら警報にならない雨量でも警報が出ます。
次の雨は9月26日から
銚子地方気象台の週間予報では、9月26日・27日の降水確率がいずれも50%。前線が本州付近を南下するためで、予報の信頼度はCです。8月と9月の2度の雨で、県内の地面と斜面は水を含んだままです。土砂災害の危険警報(レベル4)は9月22日11時43分に全域で解除されましたが、崩れやすさが台風前に戻ったわけではありません。
台風25号の交通とライフラインの現状は外房線は9月23日も終日運休|再開した路線と停電が招いた断水、次の雨と片付けの目安は9月26日から次の雨|斜面は水を含んだままにまとめています。8月千葉豪雨からの手続きや片付けは被災後の手続きは何から手をつけるかが使えます。
