台風25号で千葉県内の床上浸水は517棟(9月25日の第13報)。そのうち300棟が佐倉市に集中しました。県全体の58%です。佐倉市は8月の千葉豪雨でも半壊249棟・床上浸水40棟を数えており、1か月余りの間に2度浸水したことになります。高崎川が氾濫したこと自体は報じられていますが、なぜ佐倉なのか、なぜ水がなかなか引かなかったのかは、川の行き先を見ると見当がつきます。
県内の床上浸水の6割近くが佐倉市
県の被害情報第13報(9月25日11時発表)による住家被害です。
| 項目 | 県全体 | 佐倉市 |
|---|---|---|
| 床上浸水 | 517棟 | 300棟 |
| 床下浸水 | 675棟 | 記載なし |
| 半壊 | 45棟 | 5棟 |
| 全壊 | 35棟 | 9棟(城内町、岩富、飯野、土浮、鏑木町、宮小路町) |
床上浸水が次に多いのは大網白里市の58棟、鎌ケ谷市の54棟で、佐倉市とは5倍以上の開きがあります。全壊も9月23日の1棟から9棟に増えました。避難所は9月24日13時時点で3か所が開き、28世帯39人が避難しています。
氾濫したのは高崎川、越水したのは鹿島川
県土整備部の集計では、台風25号で氾濫が発生した河川は3つです。小糸川(君津市中島)、高崎川(佐倉市鏑木橋)、養老川(市原市養老の高滝ダムから東京湾まで)。このうち佐倉市内を流れるのが高崎川で、鏑木橋の観測所で警戒レベル5にあたる氾濫発生情報が出ました。
鹿島川は「越水した河川」として記録されています。越水は堤防を越えて水があふれた状態で、県の区分では氾濫発生とは別に扱われています。報道やSNSでは「高崎川と鹿島川のダブル氾濫」と語られましたが、県が氾濫発生として扱っているのは高崎川のほうです。
| 河川 | 県の区分 | 場所 |
|---|---|---|
| 高崎川 | 氾濫発生(レベル5)/氾濫危険情報 | 鏑木橋 |
| 鹿島川 | 越水 | — |
| 北印旛沼 | 越水、堤防決壊2か所 | — |
| 長門川 | 堤防決壊1か所 | — |
| 西印旛沼、印旛放水路 | 越水 | — |
| 手賀沼 | 氾濫危険情報(レベル4) | 手賀沼 |
高崎川も鹿島川も、行き先は印旛沼
高崎川は佐倉市街地を流れて鹿島川に合流し、鹿島川は印旛沼へ注ぎます。印旛沼は利根川水系の湖沼で、そこにたまった水は印旛放水路などを通じて排出されます。つまり佐倉市街の水は、最終的に印旛沼を経由しないと出ていけません。
NHKは専門家の見方として、下流の印旛沼を含めて水位が上がったことで川の水が流れにくくなり氾濫したとみられる、と伝えています。上流でどれだけ雨が降ったかだけでなく、下流の沼が満杯に近いかどうかで、同じ雨量でも結果が変わることになります。県は台風25号で北印旛沼と西印旛沼の越水を記録し、9月24日の資料では北印旛沼で2か所、長門川で1か所の堤防決壊も報告しました。農林水産部によると、印旛沼の角川集水路も破堤して水田に水が流れ込んでいます。沼の側にも余裕がなかったということです。
排水には国の設備も入っています。国土交通省の排水ポンプ車が佐倉市に3台、水資源機構の排水ポンプ車が利根川沿いの印旛機場周辺に4台設置されました。関東地方整備局は9月23日に印旛沼へTEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)4人を派遣しています。
この構造は、水が引くまでの時間にも効きます。SNSでの口コミには「高崎川の下流が印旛沼なので、ここが引かないと佐倉市内の水は引かない」という地元からの指摘が出ていました。実際、佐倉市の避難指示と緊急安全確保が解除されたのは9月22日16時40分です。雨は22日未明にはやんでいましたが、解除まで半日以上かかりました。
雨がやんだあとの市内の様子も、通常の浸水とは違っていました。「佐倉駅南口周辺や大崎台は冠水していないが、坂道の至るところから湧水が止まらない」「マンホールから水が噴き出して排水が追いつかない」といった投稿が続いています。地中にしみ込んだ水が出続けている状態で、表面の水が引いても地盤は水を含んだままです。
8月と9月で、雨の降り方は違った
佐倉市に降った雨を、県の資料から並べます。指標が違うので単純比較はできませんが、性格の違いは読み取れます。
| 災害 | 降水量 | 備考 |
|---|---|---|
| 8月千葉豪雨(8月13日) | 24時間最大239.0mm/1時間最大97.0mm | 短時間に集中 |
| 台風25号(9月19〜22日) | 48時間最大377.5mm | 観測史上最大を更新 |
8月13日は1時間に97.0mmという猛烈な雨で、下水道や側溝の処理能力を一気に超えました。佐倉市では半壊249棟・床上浸水40棟・床下浸水138棟の被害が出ています。台風25号は時間雨量こそそこまで極端ではないものの、48時間で377.5mmが降り続き、観測史上最大を更新しました。長く降り続けたぶん、川と印旛沼の水位が下がるひまがありませんでした。
8月千葉豪雨では佐倉市で2人が亡くなっています。臼井台の66歳女性は道路冠水で自動車に閉じ込められているところを発見され、上志津の80代男性は路上で倒れているところを発見されました。台風25号による佐倉市の死者は報告されていません。
道路も広い範囲で止まった
台風25号による県管理道路の全面通行止め(9月22日7時時点の一覧)では、佐倉市内の冠水が目立ちます。
- 国道296号:佐倉市田町、佐倉市臼井台(2か所)、佐倉市鏑木(9月24日7時時点でも田町と臼井台は冠水で全面通行止め)
- 県道佐倉停車場千代田線:佐倉市羽鳥〜寺崎(9月24日7時時点でも全面通行止め)
- 県道佐倉印西線:佐倉市表町
- 県道千葉八街横芝線:佐倉市岩富町〜八街市八街い
- 県道岩富山田台線:佐倉市岩富町〜千葉市若葉区内小間子
鉄道も、JR総武本線の千葉〜佐倉と成田線の千葉〜成田が佐倉駅付近の氾濫で止まり、京成本線も京成臼井〜京成佐倉が河川増水で運転見合わせになりました。JR佐倉駅前のロータリーが水に浸かった様子はSNSで多く共有されています。総武本線の千葉〜佐倉は23日の始発から本数を減らして再開し、京成線は25日12時時点で平常運行に戻りました。ただし総武本線は、佐倉から先の榎戸〜成東が八街〜日向間の被害で復旧まで1か月程度かかる見込みです。
佐倉市の災害ボランティアセンターは8月から開いたまま
佐倉市社会福祉協議会の災害ボランティアセンターは、8月千葉豪雨を受けて8月15日に開設され、そのまま活動が続いています。募集範囲は佐倉市内と近隣市町です(9月25日時点)。8月の被害の片付けが終わらないうちに、9月の被害が重なった形になります。
災害救助法は、8月千葉豪雨で佐倉市に適用され、台風25号でも継続して適用されています。9月20日付で新たに適用された24市町村の一覧に佐倉市の名前がないのは、適用が外れたからではなく、8月からの適用が続いているためです。り災証明の申請や支援制度は市の窓口で扱われます。
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確認先
- 佐倉市(り災証明・支援制度・ごみの出し方)
- 千葉県防災ポータルサイト(被害情報の各報PDF)
- 千葉災害ボランティア情報(市町別の災害VC開設状況)
- 千葉県「令和8年台風第25号に伴う対応」

